木材販売店が陥りやすい誤り

有限会社スプラム 代表取締役 竹内 幸次


小規模の木材販売店は、その規模の過小性から、いくつかの陥りやすい経営上の誤りがある。代表的なものを以下にあげてみよう。

「グレシャムの法側」
ほとんどの小規模販売店に見られる法側である。これは、経営者が日々の業務の忙殺されて、本来行うべき業務が行われないという状況を指す。ここで、「経営者の本来の業務」を確認しよう。

@経営目的(企業の存在理念)を定めること
A経営戦略(中長期的な事業ビジョンの策略)を策定すること
B企業を革新すること(外部環境変化への適応)
C社会的リーダーシップを発揮すること

これらは、どれも企業が存続していく(ゴーイングコンサーンという)うえで欠かせない重要な活動であり、また、経営者にしか行えない活動でもある。御社は如何であろうか? 独自の経営理念を持ち、外部環境の変化に対応して革新を続けているであろうか? 電話受発注や市場や展示即売会での仕入れ、相場情報集め、積み込みや配送、請求単価調べ等の業務へ多くの時間や思考を割いてはいないか? これらは経営者以外の従業員層でも行える業務であり、これらを経営者自らが行っているようなら、従業員の能力開発が進んでいないと考えていい。このような販売店は、規制緩和でビジネスチャンスにあふれる現在においては、社会的存在価値が急激に薄れていくので注意が必要だ。

規模の小ささはマイナスか?
小規模性が経営上で大きなファクターになったのは規模の経済の時代である。重厚長大が力の源泉であった。しかしながら、情報ネットワーク時代の現在では、範囲の経済、アイデアの経済の時代である。経営規模は決定的なファクターではない。事実、インターネット上では、規模の大小を戦略外にした新規のビジネスが数多い。彼らは旺盛な事業意欲と革新的発想で新たな産業を構築している。まさにソニー創業者の「日本よ、俺についてこい」の気概を感じる。この点に関しても木材販売店の意識は前時代的だ。中小企業診断士として創業期企業のコンサルティングを手がけることが多いが、成功する経営者は、この規模の過小性を「弱み」ではなくむしろ「強み」と認識している。ビジネスのスタイルとして小規模性と意思決定の迅速さを売り物にしたSOHO(ソーホー)が増えているのも納得がいく。中小企業は規模の過小性からくる様々な制約のもとで経営している。その制約を取り除いてくれるキーワードが「情報ネットワーク」である。EDI(電子情報交換)やEOS(電子受発注)、顧客データベース、インターネット等のIT(情報技術)の活用には国の助成制度も多い。建材メーカーや製材 業者、木材市場、工務店と一体となった販売チャネル(経路)としての情報ネットワーク化を本格的に志向されたい。
以上、2点を指摘したが、克服には、どちらも「前向きな姿勢」が必要であることに気づかれると思う。この「前向きな姿勢」は、実は顧客が発注を決める大きなポイントであり、販売促進に深く関係することも認識しておこう。