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電子メールは社内広報の価値をアップさせる
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PR&マネジメント研究所スプラム代表 竹内 幸次 |
NOMAプレスサービス掲載 |
日本電子メール協議会が従業員500人以上の企業約5,000社に行った調査(94年10月実施)によると、
回答企業の31%(256社)が電子メールを利用しており、27%(222社)が利用を計画中であった。
そして今後の予想とて95年中に約350社、96年中に約470社が利用企業になるとしている。
まさに電子メールの導入は一大ブームだ。考えてみれば、商用パソコン
ネットのID取得者数は現在約400万人。複数登録者もいるものの、日本総人口の約3%にあたるまでにな
った。帰宅後にパソコン通信に親しむビジネスマンが増えているなら、企業内電子メールに抵抗がない
ビジネスマンも当然増えている。NTTが都内在住の60代男性300人に実施したアンケートでも、
パソコン通信に興味がある人は6割、マルチメディア
に関心がある人は7割という結果である。
●「広報活動の価値」は広報有効性×広報能率性
ここで、「電子メール」と「社内広報の価値」について考えてみよう。結論から言うと、電子メールの導入
により社内広報の価値をアップさせることができる。以下、説明しよう。
日本広報学会の席上で広報活動の価値を以下の式で表せるとの発表があった。
広報活動の価値───────────┐
│ ... 本来の目的達成 ........... 遂行活動 ........... │
│=─────── × ────────│
│ ........ 遂行活動 ............... 投入時間・コスト......│
└─────────────────┘
式から、以下のことが言える。
1.右辺の左側は、活動に対する成果の度合を表すので「広報活動の有効性」を表す。
式から、有効性のアップは、目的達成度の向上、広報活動の縮小、あるいは広報活動の拡大以上の
目的達成度の向上、目的達成度の低下以上の広報活動の縮小によりもたらされる。
2.右側は、インプットに対するアウトプットを表すので「広報活動の能率性」を表す。
能率性のアップは、上記同様、より分子を大きくし、より分母を小さくした時にもたらされる。
●電子メール導入と同時に市場密着度を増す
ここで右辺の3要素が電子メールの導入でどのように変化するのかを考えてみよう。
1.「投入時間・コスト」
社内広報における「投入時間・コスト」とは、社内誌編集時間(執筆する社員の原稿作成時間も)、
社内誌発行費用、担当者の人件費等である。電子メールを活用した社内誌の編集は、原稿の収集、
加工、印刷会社への入稿に費やす時間を大幅に短縮させる。さらに電子社内報に踏み切れば紙代と
配送費の大幅な削減になる。編集時間の短縮は人件費削減につなが
る。ここで、情報通信時のコスト比較に関する興味深いデータがある。日米間の情報通信でA4紙を
毎日20枚送信した際のファクシミリ送信とインターネット送信との通信コストの違いのデータだ。
ファクシミリ送信の場合は年間144万円の通信費であったが、インターネット送信ではわずか96,000円。
なんと15分の1のコストで情報が伝えられたのである。
2.「遂行活動」
社内広報を遂行する活動は「社内誌発行」が代表的だが、電子メールを活用すれば電子社内報も合わせて
発行できる。従来の月刊等にとらわれないきめの細かい情報発信が可能になる。さらに、ダイレクトに
経営に直結する情報活動として、顧客や競合会社の動向・意向等に関する定量・定性情報をデータベース化
する「情報センター」の機能も発揮できよう。
3.「本来の目的達成」
社内誌の目的を「経営理念の浸透」等とする企業が多いが、「何のための経営理念浸透か」を考えると、
「戦略面、管理面に大別される経営力の強化」という目的に行き着く。よって、経営力がどれくらい強化
されたかが達成度になる。経営力の1つであるマーケティング力を例に電子メールの効用を考えてみよう。
マーケティングは、マーケティング機会の分析(環境の機会・脅威、自社の強み・弱みの把握)」の
段階を経て、「4P」である商品、価格、立地、プロモーションの諸活動が展開される。ニーズは多様化し
ており、企業はニーズを「正確に」「早く」キャッチし、素早く対応することが求められている。
そこで電子メールは恰好のツールとして活用することができる。
つまり電子メールの導入により、課長、次長等の中間管理職のポストを合理的に減らすことができ、
その結果、組織構造が簡略化され、従来の「ピラミッド型」から「文鎮型」へ組織を移行できる。
文鎮型は組織の底辺が幅広く、顧客接点が多いのでニーズや競合情報の吸い上げも増加する。
また、組織の縦の系列が簡素化しているので、意思決定者への市場情報等の到着が早い。
電子メール活用なのでなおさらだ。こうして市場への密着度が増し、マーケティング力がアップする。
以上、電子メールは右辺の3要素を変化させ、社内広報の価値を向上させることになる。
●意思決定力に応じて組織を再構築する
ここで、電子メールを戦略的に機能させるポイントを整理してみよう。
1.導入目的を明確にすること。トップがコミュニケーションや顧客主義(市場情報)、
クイックレスポンスの大切さを認識することがポイントだ。また、口頭伝達の必要性も忘れないこと。
2.導入計画には文鎮型組織への移行も織り込むこと。労働生産性向上のため、
不要なポストを排除し組織を再構築する。留意点は、電子メールで情報を受けた部長等の
「意思決定力」に応じて組織を再構築すること。「意思決定のための情報伝達」ということをしっかりと
押さえておこう。山ほどの電子メールを受け、意思決定力以上の情報を温存していて
も、経営体質は何ら変わらない。
3.意思決定機関の階層を減らすこと。より市場に密着した経営を行うには正確で早い意思決定が不可欠。
社長→担当役員→部長→担当者くらいに簡略できればベスト。
4.意思決定者の権限と責任を明確化する。
5.意思決定者の判断力をアップする。これにより意思決定のしくみが再構築される。
稟議書、会議等、日本企業は意思決定に少なからぬ時間と複数人の判断力を費やしてきた。
組織を巻き込むうえでは有効だったが、構造転換期には判断スピードが要求されている。
●広報部門は「戦略的な情報センター」へ
さて、以上のような電子メールを活用した経営力アップには、従来の社内広報や広報部門の
範疇を越えた視点が要求される。経済の構造転換が「新しい広報」を要求していることは、急激に進む
インターネット広報等の普及で明らかである。広報部門は「戦略的な情報センター」として、
これまでに培ってきた表現・伝達力、社員士気向上ノウハウ等々を生かし、価値ある成果を発揮していこう。
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