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社内広報はワークショップ型に変化していく
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PR&マネジメント研究所スプラム代表 竹内 幸次 |
NOMAプレスサービス掲載 |
広報担当者にとって、今年は進行するメディアインフラと、変化するコミュニケーション環境での
新しい広報体制づくりに明け暮れた1年であったと思う。インターネット上では多くの企業がPR、
販促、資源・人材調達等を目的にホームページを開設したし、記者発表当日にネット上に情報を公開
するという画期的な動きも始まった。社内広報の分野では、インターネットを社内情報伝達のインフラに
する動きや、意思決定システムを革新する社内電子メール、速報性と参加性が特徴の電子社内報等が登場
した。まさに歴史的な広報変革期にあり、エキサイティングでやり甲斐があった1年であったのではないだ
ろうか。
●社内広報と「関係性パラダイム」
今年のような変革期には、「広報の手段」の変革に目がいきやすく、「広報の目的や方針」の変革が
あと追いでなされることが多い。
ここで、来年以降の社内広報の方向を考える切り口に関し、私見と提案を述べてみたい。
マーケティングにおける「売り手」と「買い手」の関係に関する3つのパラダイムをヒントに、
社内広報のパラダイムを考えてみる。
<社内広報の3つのパラダイム>
1.刺激・反応パラダイム
広報部門が社内誌等で発する刺激は、社員(時にトップも含まれる)の特性と問題意識を経て、
社員の反応を導くという社内広報観。一方向的な情報伝達により、企業に好ましい社員行動を導こうとする。
2.交換パラダイム
企業や広報部門が持つ社員に有効な情報と、社員が持つモチベーションの交換を促進する活動が
社内広報であるという社内広報観。双方が交換のメリットを享受し、企業成長と社員満足を同時に
達成する。広報部門は社員のモチベーション要因を十分に分析して情報を発するが、
1つの情報と1つのモチベーションを交換するという、単発的な視点。
3.関係性パラダイム
長期的な視点をもって企業と社員の関係そのものを最適化し、企業満足と社員満足を同時に
満たすという社内広報観。関係の最適化とは信頼を生むことであり、信頼とは相互に相手の能力を
信じることである。信頼は企業、社員の個別の行動では生まれず、互いがパートナー意識をもって、
活発なコミュニケーションを繰り返すことで初めて生まれる。いわ
ば「協働的社内広報」と言えよう。
上記の3つのパラダイムは、自社の社内広報理念によって選択されるものであり、
どれも有効性を持っているが、関係性パラダイムに欠かせない活発なコミュニケーションを可能
にするメディアインフラが飛躍的に整備されていることに注目するべきであろう。
●社内広報を類型化してみる
また、「企業・社員の双方の満足を導くために社内に流す情報」をベースに、
企業と社員のマトリックスを作ると、社内広報の役割が見えてくる。
Aタイプ:情報量重視型社内広報
企業も社員も有効な情報の種類を知っている場合。画一的な社員像を前提としており、
前述の「刺激・反応パラダイム」のもとで展開される社内広報がこのスタイルに近い。
Bタイプ:広報先導型社内広報
企業(広報部門)はどういう情報を社内広報すれば企業・社員とも満足するのかを知っているが、
社員はそれを知らない場合。社内誌等で情報を提供すると、社員の情報ニーズが顕在化され、
社内誌への満足感が生まれる。
Cタイプ:社員先導型社内広報
社員はどういう情報が社内広報されれば、満足するのかを知っているが、広報部門はそれを知らない
場合。企業と社員の情報ニーズを分析し、それを少しでも満たすため、
「読まれる社内誌を」等の考えが前面に出る。
Dタイプ:ワークショップ型社内広報
広報部門も社員も、有効な情報が何であるのかをつかんでいない場合。広報部門と社員は、
相互信頼のもと、協働して有効な社内広報を作り上げていく。社員満足の要因や、
企業満足の定義が変化する時に有効なスタイル。
尚、現在の経営環境やメディアインフラの発達を考えると、来年以降、ネットワークを活かした
ワークショップ型の社内広報を志向する企業が増えてくると思われる。具体的には、インターネットの
社内限定エリア内に社内広報エリアを設け、そこで企業、社員、広報部門の網の目状の社内コミュニ
ケーションを展開する。社内広報のあり方自体もテーマ
となり、三位一体で作り上げる社内広報にする。広報部門が設定した企画に社員の情報をあてはめ
ても構わないし、社員自ら企画した形式で発信してもらっても構わない。社員がネット上に多く
登場すれば、「知っている社員が出ていると嬉しい」という仲間心理を活かせ、情報への注目度は高まる。
アクセス数をカウントすれば社員の興味対象もつかめる。
●「広報フォーラム」をネット上に設けたい
最後に、私の使命である「広報という切り口から中小企業を元気にする」という視点からの話だが、
企業の広報マインドの向上と効率的な広報運営の一助として、インターネット上に、
「広報フォーラム」を作りたいと思っている。日本企業の99%が中小企業だが、中小企業は一般的に
広報の意識は薄い。意識が目覚めたとしても、広報の考え方やスキル
の向上には時間がかかる。「広報フォーラム」の継続的な運営で、創業・中小企業の広報マインドが
向上されたら、やがて企業と市民生活との接点が今以上に密接になり、豊かな日本が形づくられると思う。
具体的に以下のような情報を広報フォーラムに載せてみたい。
・広報に関する各種基礎知識(マインド面/スキル面)
・広報関係機関一覧(社団法人や研究機関等)
・広報関係のデータベース(書籍、調査レポート、論文等)
・新聞記者等マスコミからの自由意見
・新規広報手法の紹介
・広報担当者の意見・情報交換
・社内誌の月例企画のヒント
・社内誌の目次情報
・転載フリーのアンケート集計結果
・著作権フリーのデジタルフォト
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