インターネットで活気づく商店街

PR&マネジメント研究所スプラム代表 竹内 幸次 NOMAプレスサービス掲載


商店街は、主婦にとっては日々の買物の場所、子供たちにとっては痛い歯医者や耳鼻科のある所、 お父さんにとってはほろ酔い気分で歩く裏道・・・、という具合に、私たちの生活に密着している。 店のおばさんに「おかえり、今日は早いね〜」などと声を掛けられると、あぁ、この街に住んでいるんだな、と感じる。 商店街は身近だ。

こんな心暖まる商店街が私は好きだが、残念なことに、最近あまり元気がない商店街が多い。 モータリゼーションの進展、有職女性の増加、土日のまとめ買い傾向、また、 パワーセンター等の米国流の革新的小売業態の上陸、大店法緩和の影響等によって、 商店街の集客力と売上高が減少傾向を強めている。

厳しい状況の商店街ではあるが、今年に入って、ある変化が起こりはじめている。「インターネット」だ。 今や大手企業のほとんどがホームページを持つようになったが、小規模な商店では逆にほとんどが インターネットを「見たことがない」のが現状。先日も川崎市のある商店街で「インターネットと商店街の未来」 という題で話をしたのだが、加盟百数十店の中でインターネットに接続している店は2店のみ。 もちろんホームページを持っている店はない。オンラインショッピング等を説明しても 当初はあまりピンとこない店主が多かったが、次第に「どのくらいの予算でインターネットができるのか」等の質問が飛び出し、 最後には「教育への影響」や「商店街もインターネットを使うことを考えなければならない」等の前向きな意見が飛び交うようになった。

私は常々「経営活性化のためパソコンを買ってインターネットで今の時代を知ることが大切」と話しているのだが、 腕を組みながら「そろそろ本気で考えるか」とうなずく店主を見ていると、商店街が新しいあり方を求めて 胎動している実感を得た。面白い時代がくる。

大手通信会社等の積極的な姿勢も手伝って、ホームページを持つ商店街がこのところ急増している。 川崎市のモトスミ・ブレーメン通り商店街は6月から「ブレーメン・ネット」(http://www.bremen.or.jp/) というプロバイダー業まで始め、地域のボランティア活動を積極的に支援するスタンスを表明しているし、 世田谷区の桜新町商店街(http://www.sphere.ad.jp/mytown/sakura/)では地元住民の水前寺清子さんの メッセージを声で発信し、充実したタウン情報を掲載している。

少し前までは商店街マップを載せるだけというホームページ(多くはインターネット関連業者が無料で載せていた) が多かったが、最近ではStreamworks、Realaudio等のプラグイン・ソフトの登場で訴求力が格段にアップしており、 通りを歩いているような疑似体験ができるホームページ、ページをプリントして持ち込めば10%割引く等の 販促アイデア、オンラインで受注・決済するホームページ等も登場し、多彩になってきている。

世界は「大競争時代」に突入した。インターネットは新たな競争を生む脅威になるが、 同時に新たな顧客関係を作り出す機会でもある。今後どちらの影響が表面化するのかは商店街の努力次第だが、 確実なのはインターネット活用は個店にとっては商売の基本を考え直す絶好の材料になり、 商店街にとっては共通の話題にすることで内部コミュニケーションを生み活性化をもたらすということだ。

誰のどんなニーズを満たし、競合店との違いは何で、その優位性をどうやってアピールし、 顧客コミュニケーションをどのようにシステム化するのか。これが明確になり、商店街のマーケティングが革新されていく。 元来、商店街に立地するメリットは地域(顧客)密着性であった。 これはインターネットの得意とするワン・トゥー・ワン・マーケティングによって再度強化できる。 私も今年は商店街に出向くことが多くなりそうである。

<たけうちこうじ>経営コンサルタント、中小企業診断士、イベント業務管理者、神奈川県非常勤中小企業診断員。 企業での長年の広報室勤務経験を生かして、コミュニケーションを切り口にした商店街のインターネット活用の コンサルティングや、中小企業経営者むけインターネット講座の講師等も行う。 「インターネット・日本企業WWWディレクトリー」(日経BP社)を執筆(共著)。


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